ライバー事務所との契約で最も注意すべきなのが「違約金」のトラブルです。途中退所や無断移籍を機に高額な請求を受けるケースがありますが、全ての請求が法的に有効とは限りません。
大切なのは、契約の仕組みと正しい対処手順を知っておくことです。
本記事では、違約金が発生する構造やトラブル事例、請求された際の具体的な対応方法、悪質な事務所を見抜くポイントを解説します。契約前や退所時に役立つ実践的な知識を網羅しました。
ライバー事務所で違約金は本当にあるのか?

結論から言うと、違約金が「存在する契約」はあります。ただし、すべての事務所に必ずあるわけではありません。
違約金トラブルの多くは、「契約内容を正確に理解していなかった」「還元率ばかり見て契約条項を読んでいなかった」このどちらかで起きています。
まずは、仕組みそのものを整理しておきましょう。
違約金が発生する仕組み(契約の基本構造)
ライバー事務所との契約は、基本的に業務委託契約です。構造はシンプルで、
・ライバーは配信活動を行う
・事務所はサポートやマネジメントを行う
・収益はアプリ経由で分配される
この関係の中で、「一定期間は所属する」「無断で移籍しない」などの条件が契約書に記載されます。もしその条件に違反した場合、「事前に定めた金額を支払う」という条項が違約金です。
重要なのはここです。違約金は“罰金”ではなく、「契約違反が起きたときの事前合意された補償額」という位置づけです。
だからこそ、契約書に書いてあるかどうかがすべての起点になります。
違約金と損害賠償の違い
この2つは似ているようで意味が違います。
違約金
→ 契約時にあらかじめ金額が決まっている
損害賠償
→ 実際に発生した損害額をあとから請求する
違約金は「○万円」と固定されていることが多く、
損害賠償は「本当にその損害があったか」を立証する必要があります。
つまり、
・違約金は“事前設定型”
・損害賠償は“事後証明型”
という違い。契約書に「違約金」と書かれているか、「損害賠償請求」と書かれているかで意味は大きく変わります。ここを混同すると判断を誤ります。
実際に違約金が問題になるケースの傾向
トラブルになりやすいのは、次のようなケースです。
・契約期間中に突然退所する
・他事務所に無断で移籍する
・二重契約を結ぶ
・最低活動条件を満たさない
・配信禁止期間中に活動する
特に多いのは「途中退所」と「無断移籍」です。ただし、ここで重要なのは、すべての違約金が法的に有効とは限らないという点です。
あまりにも高額だったり、合理性がない場合は、無効と判断される可能性もあります。だからこそ、
・契約時に確認する
・トラブル時は慌てない
この2つが重要になります。違約金は“都市伝説”でも“必ず払うもの”でもありません。契約内容と状況次第。まずは構造を理解することが、最初の防御になります。
違約金が発生しやすい3つのパターン

違約金トラブルは「突然請求された」という形で表面化しますが、実際はある程度パターンが決まっています。ほとんどはこの3つに集約されます。
契約期間中の途中退所
トラブルの理由としてもっとも多いのがこのケースです。契約書に「契約期間:6か月」「1年間は原則継続」といった条項がある場合、その期間内での退所は“契約違反”とみなされる可能性があります。
事務所側の理屈は以下の通りです。
- 育成コストをかけた
- プロモーションを予定していた
- イベント戦略を組んでいた
「活動が途中で止まる=事務所に損失が出る」という考え方から、違約金条項が設定されることがあります。
ただし重要なのは、以下の点です。
- 自動更新条項はあるか
- 更新停止の通知期限はいつか
- 正当な理由がある場合の扱い
ここを確認せずに退所を強行すると、大きなトラブルに発展しやすくなります。「契約期間と更新条件」を確認しないまま契約するのが一番危険です。
無断移籍・他事務所との二重契約
次に多いのが無断移籍ですが、これは非常にトラブルに発展しやすいケースです。
事務所は配信アプリ側とパートナー契約を締結していることが多く、所属ライバーに対する管理責任を負っているためです。無断で他事務所へ移籍を強行すると、契約違反だけでなく業務妨害やアプリの規約違反とみなされる可能性があります。
特に警戒すべきは「二重契約」の状態です。複数の事務所に同時に所属して配信を行うことは、多くの場合で明確に禁止されています。
円満に移籍を進めるなら、以下の手順を必ず守りましょう。
- 現在の契約を正式に終了させる手続きを行う
- 書面で解約が完了した事実の確認を取る
- その後に新しい事務所と契約を結ぶ
この順番を一つでも間違えてしまうと、正当な違約金請求の口実を与えてしまうことになります。
ノルマ未達・配信禁止違反
最近増えているのが、活動条件に関する違反によるトラブルです。 具体的には、以下のような条項がある場合に、それを守れなかったことが問題視されます。
- 月◯時間以上の配信ノルマ
- 特定イベントへの参加義務
- 配信禁止期間(競業避止義務)の設定
特に注意が必要なのは「配信禁止違反」です。退所後◯か月間は同じアプリで活動してはいけないといった制限がある場合、これを破って活動を再開すると違約金の対象になるケースがあります。
ノルマに関しても、それが単なる「努力目標」なのか、あるいは「明確な義務」なのかによって法的な扱いが大きく変わります。
結局のところ、契約書にどのような文言で記載されているかがすべてを左右します。
違約金を請求されたときの正しい対処手順

突然「違約金を支払ってください」と言われると、どうしても焦ります。
でも一番やってはいけないのは、内容を確認せずにすぐ支払ってしまうことです。
請求=必ず払わなければならない、ではありません。
順番を間違えなければ、対応の選択肢はあります。
まず契約書で確認すべきポイント
突然の請求に焦る気持ちは分かりますが、最初にやるべきことは感情的な交渉ではなく、「契約書の内容」を冷静に突き合わせることです。
確認すべき主なポイントは以下の3つに集約されます。
- 違約金条項が具体的な文言で明確に記載されているか
- 請求額の算定根拠(なぜその金額なのか)が示されているか
- 解約のルールや通知期間が守られていたか
単に「違約金が発生する場合がある」といった曖昧な記述だけでは、法的に有効な請求根拠としては不十分なケースもあります。あわせて、自動更新の有無や、契約時の口頭説明と書面の内容にズレがないかも必ずチェックしてください。
まずは事実関係を正しく整理する。このステップを飛ばさずに対応することが、自分を守るための第一歩となります。
違約金が無効になる可能性があるケース
契約書に記載があったとしても、すべての違約金が法的に有効であるとは限りません。 例えば、以下のようなケースでは、減額や無効の主張ができる可能性があります。
- 社会通念上、著しく高額な設定
- 事務所が被った実際の損害と明らかに不釣り合いな金額
- 消費者契約法などの法律に抵触している
- 違約金が発生する条件や内容が不明確
特に個人ライバーは、法的に「事業者」ではなく「消費者」と判断されるケースがあり、その場合は消費者契約法による強い保護対象となることがあります。
ただし、これらの判断には高度な法的知識が不可欠です。自分一人で「これは無効だ」と決めつけて無視するのではなく、専門家による客観的な法的評価を受けることが非常に重要です。
弁護士・消費生活センターに相談する目安
次のような状況に当てはまるなら、一人で抱え込まず早急に専門家への相談を検討すべきです。
- 数十万円以上の高額な請求を受けている
- 「支払わなければ法的措置を取る」と強い言葉で催促されている
- そもそも契約内容や請求の根拠に納得がいかない
- 相手からの連絡に対して精神的に強いプレッシャーを感じている
消費生活センターでは、無料で状況整理や今後の対応方針についてアドバイスを受けることができます。また、本格的な法的争いに発展しそうな場合は、弁護士への相談も有効です。最近では初回無料相談を実施している法律事務所も増えています。
もっとも大事なのは、「請求された=即座に支払わなければならない」ではないということです。
「契約の確認 → 妥当性の検討 → 専門家への相談」という正しい手順を守るだけで、冷静に状況を打破できます。焦ってすぐに振り込んだりせず、まずは立ち止まることが最大の防御策になります。
悪質な事務所を見抜くチェックリスト

違約金トラブルを防ぐうえで一番大事なのは、
「請求された後にどうするか」ではなく、
そもそも危ない事務所に近づかないことです。
契約前にチェックできるポイントは、実はかなりはっきりしています。
高額な違約金条項の特徴
違約金の項目でまずチェックすべきなのは、金額の大きさそのものよりも「金額が決定されるまでのプロセス(書き方)」です。
以下のようなパターンが契約書に含まれている場合は注意が必要です。
- 具体的な算定根拠が明記されていない
- 「一律◯十万円」のように損害の程度を無視して固定されている
- どのような損害に対する支払いなのか説明がない
- 「当社が合理的に判断する金額」といった主観的な表現がある
特に「理由のいかんを問わず違約金として◯万円を支払う」という一文には警戒してください。これでは事務所側が実際に損害を受けていなくても、高額請求が可能になってしまいます。
また、表向きは違約金と書かずに「研修費」「育成費」「広告費」といった名目で、退所時に精算を求める条項もリスクが高いといえます。金額・発生条件・計算方法が誰の目にも明確でない契約は、トラブルの火種を抱えていると判断し、慎重に検討すべきです。
契約内容が曖昧な事務所の共通点
悪質な事務所ほど、言葉巧みに契約を急がせ、肝心な内容を曖昧にしようとします。
よくある危険な兆候は以下の通りです。
- 契約書を事前に共有してくれない
- 「みんな同じ内容だから安心」と個別の説明を省く
- 疑問点に対して、はぐらかすような回答しかしない
- 口頭での約束と、書面に記載されている内容が食い違っている
また、配信ノルマや報酬還元率について具体的な数字が出てこない場合も注意が必要です。「だいたいこれくらい稼げる」「サポートは万全」といった抽象的な言葉に惑わされてはいけません。
具体的な数字と条件をはっきり提示してくれるかどうかが、信頼できる事務所を見極める最大の境界線です。納得できる説明が得られるまでは、決してサインをしないよう徹底してください。
SNSスカウトDMで注意すべきサイン
近年トラブルが急増しているのが、SNS経由で送られてくるスカウトDMです。
特に以下のようなサインがあれば、警戒を強める必要があります。
- フォロワー数が極端に少ない公式アカウント
- 会社情報(社名・所在地など)がDM内に記載されていない
- 現実離れした高収入ばかりを強調する
- 「今だけ」「限定枠」と判断を急がせる表現を多用する
- 公式サイトに書かれている条件とDMの内容が食い違っている
また、面談に進む前の段階で住所や電話番号などの個人情報を過度に求めてくる場合も要注意です。本当に健全な事務所であれば、自社の透明性を確保するために法人情報を明示し、公式サイトや実績ページへ正当に誘導します。
DMを読んだ段階で少しでも違和感を覚えるなら、その直感を無視してはいけません。契約は決して急ぐ必要のないものです。あなたを焦らせる側は、自分たちが主導権を握ろうとしているに過ぎません。
トラブルの多くは、契約を結ぶ前の段階で何らかの予兆があります。チェックすべき判断材料は意外と揃っているものです。冷静に一歩引いて、相手の情報を精査する余裕を持ちましょう。
円満に退所・移籍するための具体的ステップ

事務所との関係は、始めるときよりも「終わらせ方」のほうが重要です。
感情で動くとトラブルになりやすいですが、手順を踏めば揉めずに進められます。
ポイントは、準備 → 伝え方 → その後の動き方、この3段階です。
退所前に必ず確認すべき条件
退所を決めたら、まず最初に行うべきは「契約書の再確認」です。
具体的には、以下の3点を重点的にチェックしてください。
- 契約期間(自動更新の有無)
- 解約の通知期限(例:退所の1か月前までに申し出るなど)
- 違約金や活動制限に関する条項
「◯日前までに書面で通知」と定められている場合、口頭やチャットだけで済ませてしまうと、後から「手続きが不備で解約は無効だ」と主張されるリスクがあります。
また、以下の実務的なポイントも忘れずに確認しましょう。
- 未払い報酬が残っていないか
- 報酬の最終支払日はいつになるか
- アカウントの取り扱い(そのまま引き継げるのか、削除が必要か)
特に移籍を予定している場合は、新旧事務所の契約期間が重ならないよう調整することが極めて重要です。二重契約の状態になると、一気にトラブルが深刻化する恐れがあります。
トラブルになりにくい意思表示の方法
退所の意思を伝える際、もっとも重要なのは「感情的に伝えないこと」です。
円滑に手続きを進めるためには、以下のステップを踏むのが理想的です。
- 事前に契約条件をすべて整理する
- 担当マネージャーに面談(または相談)を依頼する
- 合意後、メールや書面で正式な退所通知を送る
伝える際は「これまでの活動でお世話になりました」「今後の方向性を熟考した結果」といった言葉を選び、事務所への否定的な意見は避けましょう。たとえ不満があったとしても、その場でぶつけるメリットはありません。
あくまで目的は「円満に契約を終了させること」です。のちのトラブルを防ぐためにも、送信した通知メールややり取りの記録は必ず保存しておきましょう。
配信禁止期間への備え方
退所後に「◯か月間は同アプリで配信不可」という条項がある場合があります。 これを見落とすと、移籍直後に大きな問題へと発展しかねません。
事前に確認しておくべきなのは、以下のポイントです。
- 禁止対象は「同じアプリのみ」に限定されているか
- 他のアプリでの活動は許可されているか
- SNS活動全般が制限されることはないか
もし配信禁止期間が設定されているのなら、その期間をどう活用するか戦略を立てておくことが極めて大切です。
具体的な対策例としては、次のようなものがあります。
- 別アプリでの活動準備やテスト配信を進める
- InstagramやX(旧Twitter)などのSNS強化期間に充てる
- YouTubeなどの動画投稿中心の活動に切り替える
このように工夫次第で、ファンを離さないための「空白期間を作らない対策」は十分に可能です。
退所は活動の終わりではなく、次のステージへの切り替えです。事前の準備と証拠の確保を徹底する。これだけで、トラブルに巻き込まれる確率は劇的に下げることができます。
まとめ
ライバー事務所の違約金は、契約条件に違反した場合に発生する可能性があります。
途中退所や無断移籍などが代表例です。
請求されたら、まず契約書を確認すること。
不安があれば専門家へ相談しましょう。
事前確認と正しい手順が、トラブル回避の鍵です。
